ワールドエンタープライズ

第二次大戦後、特に1950年代末以降のアメリカの民間海外投資の増加にともなって、資本主義世界の多くの国に子会社系列会社を持ち、まさに世界的規模で活動する、アメリカの巨大企業の存在が目立っできました。これを世界企業あるいは多国籍企業と言います。戦前から世界各地に支社をおいで国際的に活動する欧米の企業は少なくなりましたが、戦後のアメリカで、特に世界企業がビッグビジネスの新しい形態として注目されるようになったのは理由がありました。この時期にアメリカの大企業の海外直接投資が増大し、それによって設立される子会社は原則として投資先の外国の法人格をとります。したがって、本来はアメリカの資本でありながら、いくつもの国籍の企業の複合体としであたかも世界の企業であるかのような外観を呈するからです。こうした世界企業の典型例として、GM、フォード、IBMなどがよくあげられますが、世界企業は必ずしもアメリカに限らず、イギリスのICIやイギリスオランダ資本のユニリーバ社などもそうです。このユニリーバや同じくイギリスオランダ資本のロイヤルダッチシェル、さらにアメリカの5大石油トラストなどは戦前からの世界企業と言えますが、これら戦前型と比べた最近の世界企業の特敷は、原料独占型から技術独占型へ、植民地従属国重点から先進国重点ヘ、利潤送金主義から再投資主義ヘ、在外支社主義から現地法人主義ヘ、といった傾向が強く、このようなアメリカの巨大企業を先頭とする海外直接投資の増大は戦後における資本輪出の重要な特徴ですが、戦後の資本輪出のいま一つの特徴としてアメリカやその他の先進国の政府による経済援助という形での海外支出があります。実はこの政府海外支出が呼び水となって、民間企業の海外直接投資が促進されていることを看過してはならず、政府海外援助も長間直接投資も、あまり増大すれば、その国の国際収支にとって負担となることは、ドル防衛やボンド危機の間題がよく示しています。

お金と世界経済

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