ドル切り下げ
1973年2月、激化した国際通過危機に対処して、米ニクソン政府はドルの10%切下げに踏切り、これに対応して日本政府は円の変動相場制移行を決定しました。一般にドル切下げといえば、米ドルの金平価の引下げを指し、これは金一単位のドル表示公定価格の引上げを意味します。米ドルの金平価は1934年以来、金1オンス35ドルに固定されていましたが、71年末のスミソニアン合意で7.89%下げられて金1オンス38ギルとなりさらに73年2月の10%切下げで金1オンス42.22ドルとなりました。このようなドル切下げは、世界経済におけるアメリカの力がその他の国に対して相対的に低下してきたことのあらわれです。しかしアメリカ資本主義の力が相対的に低下したからといっても、アメリカ系多国籍企業の活動はむしろ増大しているのであり、度肉にもドル投機にはアメリカ系多国籍企業が重要な役割を演じていました。こうした資本主義世界における構造的変化の動向を国際金融面に反映させるぺく先進国間通貨調整によって71年末から発足したスミソニアン体制はとても現実の構造的変化に適合するものではないことが露呈されました。71年6月には英ポンドの変動相場制移行、同12月にはオ−ストラリアドルの4.85%切上げ、さらに73年1月に入ってイタリアリラの二重市場倒移行とそれに続くスィスフランの変動相場制移行、そして2月早々ドル危機の全画的激化によってついにドルの10%切下げと円の変動相場制移行が実施されるに至りました。これは事実上スミソニアン体制の崩壊を意味していました。

copyrght(c).お金と世界経済.all rights reserved